3月15日のダイヤ改正でJR山手線は、朝ラッシュ時3本、夕方ラッシュ時に2本の増発が行われます。しかしながら、日中時間帯においてはコロナ前の3分20秒間隔のダイヤから5分間隔のダイヤのままとなります。将来的に増便は行われるのでしょうか。
利用者数の変化
JR東日本が公開しているデータによれば、山手線の輸送密度はコロナ前とコロナ後では次のように変化しています。公表されている数値は環状運転している山手線ではなく、正式路線としての山手線(品川駅~新宿駅~田端駅)間の数値です。品川~東京駅は東海道本線、東京駅~田端駅間は東北本線に所属いているため数値としては確認できません。
年度 | 輸送密度 | 対前年度比 | 2018 年度比 |
2015 | 1,097,093 | 96.7% | |
2016 | 1,111,243 | 101.2% | 97.9% |
2017 | 1,124,463 | 101.2% | 99.1% |
2018 | 1,134,963 | 100.9% | |
2019 | 1,121,254 | 98.8% | 98.8% |
2020 | 720,374 | 64.2% | 63.5% |
2021 | 765,771 | 106.3% | 67.5% |
2022 | 872,143 | 113.9% | 76.8% |
2023 | 942,961 | 108.1% | 83.1% |
一番利用者数が多かった2018年度(平成30年度)と比較すると、コロナ下の2020年度は、63.5%と約3分の2に輸送密度が減っています。昼の時間帯の列車を18本(3分20秒間隔)から12本(5分間隔)としたのは、この数値をもとに設定したものと思われます。
しかし、最新のデータでは、コロナ前の83.1%まで回復しています。計算上は、15本(4分間隔)としてもおかしくはないと思われます。実際、昼の時間帯でもラッシュ時並みの混雑が報道されています。
本数を増やすメリット
地方都市の路線であれば、列車の増便は待ち時間の短縮に繋がり利用者から喜ばれるでしょう。しかし、山手線では、5分が4分になっても待ち時間そのものは大きく違わないのでこのメリットはないでしょう。
むしろ山手線の場合は、車内の混雑率の低下による快適化の上昇が利用者にとっての最も喜ばれると思われます。そうなることでJR東日本の会社のイメージ向上が最大の効果でしょう。
イメージの向上が収入に影響するかという点から見るとどうなるでしょうか。旅行などで複数の移動手段がある場合に、JR東日本を選択する可能性が上昇するのでこれは収入に繋がることになります。
本数を増やすデメリット
一番大きいのは、経費の増加です。本数を増やしても利用者が増えなければ単なる経費の増加だけとなります。コロナ前から輸送密度は83.1%までしか回復しておらずコロナ前に戻ることはないでしょう。
また、ワンマン運転・自動運転が開始されるまでは、運転手・車掌の増員が必要になります。残業時間の制限などもあり、人員の増加は難しいと思います。将来的に必要がなくなる人材の採用は長期的にみてデメリットといえるでしょう。
JR東日本はどう考えるか
収入については、来年(2026年)の運賃値上げによりある程度の増収が期待できます。地方と違い運賃の値上げによる他の交通手段へのシフトはあまりないと思われますので経営的には本数を増やしても問題ないでしょう。
しかし、東京といえども少子高齢化の影響を受けることは間違いないありません。将来的には利用者は減少していくのは間違いないでしょう。そうなると、減便あるいは減車により対応することになるでしょう。JR東日本としては、今後利用者の増加が見込めないと判断しているのではないでしょうか。今一時的に増便しても、将来減便を行った際の企業イメージの悪化の方が影響が大きいと考えているのではないかと思います。
今後のワンマン運転・自動運転を考えた場合、余剰となる運転手・車掌等の現場の社員は他の業務へと配置転換されるでしょう。それを考えると早いうちに新しい業務を覚えてもらうのが会社にとってはプラスとなると思われます。定年延長となった社員に現場を任せてここ数年をしのぐつもりだと私は考えています。
さすがに、積み残しが発生したりするような事態になれば、増便を考えるでしょうが何とかなっているのであれば現状維持で行きたいと考えているのではないかと思います。したがって、よほどの状況変化がない限りこれ以上の増便は考えにくいです。
まとめ
今回のダイヤ改正でラッシュ時に5本増便が行われた山手線ですが、日中時間帯の増便は考えにくいと思います。今後についても、余程の利用者増がない限り現状維持となるのではないでしょう。
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