2003年(平成15年)3月15日に電化された小浜線ですが、総事業費101億円をかけています。電化され速達性の向上・利用者増加が期待されました。現在と過去の小浜線についてデータをもとに考察してみたいと思います。
小浜線の電化前と電化後の状況
列車本数
なお、小浜線の起点は敦賀駅であるため、本来は敦賀駅発の列車が下り列車となりますが、運用の区分けで記しています。
区間 | 1988年3月(電化前) | 2000年3月(電化後) | 2024年3月(電化後) |
東舞鶴ー小浜(下り) | 15(うち急行2) | 13(うち快速1) | 11 |
東舞鶴ー小浜(上り) | 15(うち急行2) | 13(うち快速1) | 11 |
小浜ー敦賀(下り) | 20(うち急行2) | 14(うち快速1) | 12 |
小浜ー敦賀(上り) | 19(うち急行2) | 14(うち快速2) | 14 |
利用者の減少のためでしょうか年々本数が減っています。なお、過去には2003年(平成15年)春からしばらくの間特急列車「まいづる」が東舞鶴ー小浜間で運転されていました。
輸送密度
JR西日本で公開されているデータでコロナの影響前の数字で比較します。
区間 | 1987年度 | 2018年度 | 2023年度 |
全体 | 2.712 | 1,023 | 894 |
JR発足時からみれば3分の1になっています。
駅別乗車人数
データが公表されている中でコロナの影響がない年を選んで示します。
駅名 | 2000年度 | 2003年度 | 2017年度 |
東舞鶴 | 1,534 | 1,479 | 1,537 |
松尾寺 | 27 | 49 | 47 |
青郷 | 86 | 92 | 121 |
三松 | 134 | 73 | 99 |
若狭高浜 | 414 | 436 | 325 |
若狭和田 | 192 | 152 | 121 |
若狭本郷 | 455 | 440 | 299 |
加斗 | 142 | 123 | 73 |
勢浜 | 53 | 43 | 34 |
小浜 | 1,479 | 1,412 | 921 |
東小浜 | 514 | 527 | 376 |
新平野 | 100 | 80 | 86 |
駅名 | 2000年度 | 2003年度 | 2017年度 |
上中 | 315 | 312 | 250 |
若狭有田 | 33 | 37 | 52 |
大鳥羽 | 170 | 149 | 110 |
十村 | 121 | 116 | 70 |
藤井 | 28 | 29 | 20 |
三方 | 210 | 193 | 90 |
気山 | 355 | 325 | 296 |
美浜 | 308 | 266 | 261 |
東美浜 | 57 | 54 | 32 |
栗野 | 46 | 47 | 61 |
西鶴賀 | 90 | 88 | 132 |
敦賀 | 2,928 | 2,769 | 3,589 |
電化および臨時特急「まいづる」は関係なく、右肩下がりの駅が多いです。
所要時間
下り列車東舞鶴→敦賀の平均です。1987年(昭和62年)時点では、小浜ー敦賀間は普通列車でも通過する駅がありました。
区間 | 1987年 | 2000年 | 2024年 |
東舞鶴ー小浜(普通) | 42分 | 48分 | 47分 |
東舞鶴ー小浜(快速) | 42分 | ||
東舞鶴ー小浜(急行) | 40分 | ||
小浜ー敦賀(普通) | 65分 | 69分 | 64分 |
小浜ー敦賀(快速) | |||
小浜ー敦賀(急行) | 55分 | 53分 |
電化による時短効果は、あまりないようです。
考察
- 列車本数について
利用客の減少により本数が減らされているのが分かります。電化によりキハ58系から125系に置き換えられましたが、車両数が減ったうえに座席が少なくなった(2列+1列)ことにより座れない乗客が多数発生し、「新快速なみの混雑」と呼ばれた時期もありました。現在では、1両編成はなくなり125系2両編成ですべての列車が運転されており、以前よりは快適になりました。実際、休日の昼間に乗車しましたが立席での乗車をいれれば1両でもなんとかなる程度の乗車率でした。ここは、列車の増結・解決の手間を考えればこのままでよいと思います。
- 列車本数について
利用者数を考えれば、他の路線よりも多いでしょう。政治的な問題もありこれ以上の減便は難しいものと考えます。また、変電所の数が少ないため増発は難しいでしょう。以前に183系「まいづる」号が乗り入れていた際に「まいづる」号が走ると定期列車の運行ができないとの話を聞いたことがあります。乗客が大きく減少しないのであれば、現状維持となると思います。
- 列車の所要時間について
電化したことにより、所要時間の短縮はないというよりむしろ増えています。普通に考えれば、本数の減少による列車行き違いの回数の減少・加速の悪いキハ58系から電車の125系に置き換えたことを考えればむしろ短くなるのが普通です。先ほども述べましたが、変電所の数の不足により125系の性能が抑えられていること・時速25キロの徐行区間が新しく設定されたことが原因と考えます。
- 列車の快適性について
ボックスシートのキハ58系から転換クロスシートの125系への交代ですから、ここは快適になったといってよいでしょう。車両数の減少により着席できなかったら別ですが。小浜線には一時期113系が入っていたこともありましたが、快適性では新車の125系のほうが高かったでしょう。
まとめ
小浜線の電化により、所要時間の短縮はありませんでしたが快適性については、大きく向上したと思います。変電所の関係で125系の性能がフルに活用できないため所要時間の短縮はありませんでした。ただ、時速25キロメートルの徐行区間が設定されたことを考えるとキハ58系の時よりはよくなっているのでしょう。今考えると電化よりも高性能気動車の導入のほうがよかったのかもしれません。また小浜市の住民であれば、JRバス若江線で近江今津に出て湖西線利用もありますので利用者は分散されていると思います。そのため、小浜線の利用はそこまで大きくないのでしょう。
将来、あるかもしれない山陰新幹線が完成すると小浜線は並行在来線となる可能性が高いです。そうなると、人口の少ない福井県嶺南地区を走る小浜線は、存続の危機に立たされる可能性があります。しかし、石破総理大臣が可能性を否定していますので多分ないでしょう。
電化にかけた費用に対する効果は、残念ながら高いとは言えないでしょう。ただ、そのと時利用可能な手段を用いて電化したのですから最善の手だっととはいえるのではないでしょうか。
北陸新幹線の小浜先行開業について検討した記事です。よければ読んでみてください。
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