錦川清流線大ピンチ #新幹線も影響を受ける

錦川清流線の車両です。 錦川清流線

 山口県岩国市を走行する「錦川清流線」が現在存続の危機に立たされています。以前から経営が苦しいことは知られていましたが、実態はかなり深刻な状態のようです。また、この鉄道が廃止ということになれば、新幹線の運賃に影響を与える可能性があります。

岩国市錦川清流線あり方検討 – 岩国市

岩国市ホームページ

錦川清流線について

錦川清流線の成り立ち

 「錦川清流線」は、もともとは山口県岩国市にある岩国駅(路線としては川西駅)から山口線日原駅(島根県日原町、現在の津和野町)を結ぶ路線として、1953年(昭和28年)に工事が始まりました。当時の工事の方法として「岩日北線(錦町ー日原)」「岩日南線(川西ー錦町)」に分けられそれぞれ建設が始まりました。

 1960年(昭和35年)11月1に「岩日南線」の区間が「岩日線」として営業を開始しました。当時は、広島駅からの乗りれもあり、全列車が「岩徳線」を通り岩国駅まで運行されていました。一方の、「岩日北線」は、大半の部分が完成していましたが1980年(昭和55年)に国鉄再建法により工事が中止されました。現在、は錦町駅から雙津峡温泉駅までの区間は、「とことこトレイン」として観光アトラクション化されています。

 「岩日南線」も特定地方交通線の第二次廃止対象路線となり、1987年(昭和62年)7月25日にJR西日本から第三セクター「錦川清流線」として再スタートを切る形となりました。

錦川清流線の現在

 2024年のダイヤ改正時点で、10往復が運転されており、全列車が岩徳線を通り岩国駅へ乗り入れています。清流新岩国駅で、山陽新幹線に乗り換えができますがダイヤ上は接続についてほとんど考えられていない状況でです。輸送密度は、コロナ前の2019年度(令和元年度)で、297となっておりかなり厳しい現況にあるようです。また、岩国駅近辺の(岩国ー川西)区域は、JR岩徳線となっており車両使用料は入りますが一番多いであろう運賃の収入は得られません。

 岩国市は、補助金の他に錦帯橋の観光施設の管理等の事業を指定管理制度によっも「錦川清流線」に援助を行っています。少し古いですが令和元年度の資料がありますのでリンクを貼っておきます。

錦川鉄道ホームページ http://nishikigawa.com/wp-content/uploads/dd650ba68cfcf8742109188286e9bfda.pdf

 岩国市等は、「錦川清流線」に対し補助金を投入するなどして経営をバックアップしてきましたが、そろそろ限界にきているようです。令和5年から「岩国市錦川清流線あり方検討会」を開き今後の在り方について検討しています。

「錦川清流線」は、2006年(平成18年)の市町村合併により、現在は岩国市のみの路線ですが元々は本郷村、錦町、美川町、美和町を通っていたため合併時に路線の維持について何らかの約束があると思われます。

 

将来の在り方について

岩国市錦川清流線あり方検討会

 現在は、次の5つの案で検討されているようです。

  • 現況のまま鉄道で運営
  • 上下分離方式の導入
  • みなし上下分離方式の導入
  • 全線バス転換
  • 一部バス転換

 輸送密度から考えれば、鉄道の継続はかなり厳しいものがあるでしょう。第3セクターであったとしても今後の人口減少、自然災害には勝てないだろうと思います。実際に2018年(平成30年)には、豪雨災害により2か月弱の期間不通となっています。また、一番利用者の多い川西駅ー岩国駅間がJR岩徳線となっておりその区間の運賃が入らないことはかなり厳しいです。

 バス転換する場合は、利便性の面から岩国駅への運行となると思いますが、これはこれでJR西日本との間で問題が発生するでしょう。

JR岩徳線との問題

 JR西日本「岩徳線」は、輸送密度1,066(2023年度)となっています。1日に12往復(上り1本は土曜・休日運休)ですが、川西駅から岩国駅の区間は、錦川清流線が乗り入れ22往復設定されています。岩国市は、人口約12.8万人(2023年6月1日)であり、大半は旧岩国市内に住んでいますので、利用客の大半は岩国市付近となっています。国土交通省が2024年6月21日に公表した資料(2023年度)での駅別利用者数を載せます。

川西駅は、かっこ内がJR岩徳線、西岩国・岩国駅は岩徳線の数字です。

駅名乗車人数
錦町108
柳瀬4
河山15
根笠14
清流みはらし0
駅名乗車人数
南桑6
椋野26
北河内12
行波42
南河内46
駅名乗車人数
守内かさ神4
清流新岩国63
川西436(872)
西岩国652
岩国9,378

 「錦川清流線」が廃線もしくはバス転換となった場合、沿線住民は岩国駅への乗り入れを希望するでしょう。そうなると、JR岩徳線は、利用者が大きく減少し列車本数も22往復から12往復へと減便されます。これにより利用者数が減少し、さらに輸送密度が下がるでしょう。現時点で輸送密度が1,000人を超えているためすぐには存廃の対象とはならないと思いますが、将来は危ないと思います。

山陽新幹線の運賃の計算

 山陽新幹線の岩国ー徳山間(正確には櫛ケ浜)は、特定区間として距離の短いJR岩徳線の換算キロで運賃が計算されます(岩徳線48.1キロ、山陽本線65.4キロ)。この区間は整備新幹線ではないため並行する在来線のキロ数で運賃を計算することになっています。

 もし、JR岩徳線が廃線となれば山陽本線経由での運賃計算となるので運賃・特急料金が高くなります。そうなると、山陽新幹線の利用者にも影響がでます。JR東日本が現在目指していると言われている在来線と新幹線の別線扱いがされれば影響はないです。ただ、新大阪ー博多間については、路線距離553.7キロに対し営業キロは営業キロは644.0キロとなっていますので、JR西日本が別撰扱いする可能性は低いと思います。

まとめ

 現在、山口県岩国市を走る錦川清流線については、路線の存廃を含めた議論がされています。もし、廃線となれば接続しているJR岩徳線の輸送密度が下がり路線の存続が危なくなる可能性があります。

 JR岩徳線が廃線となれば山陽新幹線の運賃・特急料金に影響を与えることになります。第3セクターの存続は、多くの人に影響を与えます。実際、新幹線を利用する距離であれば一区間運賃区分が変わるだけで大きく料金が変わります。

 JRの路線ですが、同じ山口県内で現在存廃議論が続きているJR美祢線の記事です。関心がある方は見てくださればうれしいです。

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