株式会社メディア・ヴァーグ社が運営するサイト「Merkmal]にて、名古屋鉄道広見線の新可児駅と御嵩駅の区間の存続問題があるとの記事がありました。
名古屋鉄道広見線(新可児駅~御嵩駅)間の現状
「高校生の通学が不便に…」 名鉄広見線、存続か廃止か? 年間赤字2億円と輸送密度1600~1700人の現実! 可児市長は難色も、市は火消しに躍起状態 | Merkmal(メルクマール)
Merkmalホームページ
この問題については、御嵩町のホームページでも取り上げられています。データは少し古いものとなっています。
御嵩町ホームページ
御嵩市の資料を見ると、この区間の輸送密度と営業係数は次のように推移しています。
年度 | 輸送密度 |
2008(平成20) | 2,234 |
2011(平成23) | 2,065 |
2014(平成26) | 1,891 |
2017(平成29) | 1,904 |
年度 | 営業係数 |
2010(平成22) | 325 |
2011(平成23) | 334 |
2014(平成26) | 393 |
2017(平成29) | 365 |
ただし、他のサイトでは、
鉄道協議会日誌ホームページ
1996年度(平成8年度)が4,274、2019年度(令和元年度)が1,925とありどちらが正しいのかは判断しにくいところがあります。さすがに23年間でほぼ半減は考えにくいですが、1996年の年間の利用人数が224万人から2023年度は78万人であれば正しいのでしょう。
列車の設定は、2025年時点で34往復となっていますので徐々に減便されているようです。また、終日新可児駅~御嵩駅での2両編成(ワンマンカー)でのピストン運送を行っています。
営業係数についてですが、以前は東洋経済社の発行している「鉄道完全解明」で計算した値が乗っていましたが輸送密度が10,000の路線でも100を超えている路線もあり収入と経費の範囲が資料ごとに異なるものと思われます。岡山県ですと在来線線はほとんどがかなりのレベルの赤字です。ですので、私はそこまで信頼できるものとは考えていません。
輸送密度1,600とは
近年のJR路線の数字を見ているので1,600という数字は大きく感じますが、国鉄時代には4,000が基準として設けられ道路の整備状況を加味して廃線が行われました。JR日本は輸送密度2,000以下の路線については、大量輸送機関として、鉄道の特性が発揮できず、このままの形で維持していくことは非常に難しいとしています。これについては、JR・私鉄関係なく同様の意見だと思います。
また、国土交通省はJRの路線については、1,000以下の路線を優先的に検討することにしています。経営体力のあるJRはともかくとして私鉄にとっては2,000が一つの判断材料となっているのでしょう。そういう意味では厳しい状況にあると言えます。
今後どうするか
名古屋鉄道側からは、設備の老朽化により沿線自治体に15年間で約17億6000万円が必要になると示しています。また、路線維持についは「みなし上下分離」を検討しているようです。路線の長さとしては、可児市と御嵩町でほぼ同じぐらいですが利用者としては御嵩町の方が多いため負担割合も決めるにあったては調整が困難であるようです。可児市にとってはそこまで重要な路線ではないためあまり負担したくはないのが本音ではないでしょうか。
一方、御嵩町は鉄道利用であれば、広見線を通るしかなく路線の存続は大事になります。人口1万6000年の御嵩町にとっては、令和6年度の一般会計の予算は95億5,600万円であり現状の赤字補填の1年間7,000万円以上の支援は難しいのが現状でしょう。一方の可児市は、現状の赤字補填の3,000万円が限度と表明しており負担がこれ以上になるなら鉄道以外の交通手段を検討するとの立場を取っています。そうなると鉄道を存続するのであれば、ほぼ全額御嵩町の負担となりそうです。
岡山市内のバスの話ですが、昨年車内でアンケートがありその中で、「今の乗車区間であれば運賃はいくらなら出せるか」という内容がありました。鉄道・バスにせよアンケートの中であまり聞かれることはない質問です。今後、アンケートを取るのであれば、「いくらなら負担できるか」「鉄道を残すならなくしてもよいと思う施策」についても市民に尋ね方向性を検討するのがよいかと思います。
まとめ
鉄道で残すとしても、バス転換するとしても最終的に判断するのは利用者である市民です。将来の負担の在り方も含めた議論が必要ではないでしょうか。私は、鉄道で残すのが最善だと思いませんしバスがよいとも思いませんが、どちらにせよ選択した以上はしかるべき負担が必要だとは思います。
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