昨日(2月3日)に、美祢線第4回復旧検討部会が山口県の山陽小野田市で開かれました。今回は、第3回の復旧検討部会で示された、中国運輸局から第三セクターに移行した際に発生する費用に対する補助制度の説明とJR西日本からでバスやBRTで復旧する場合の費用等の説明がありました。その資料へのリンクを貼っています。
JR美祢線利用促進協議会より
第3回復旧検討部会の振り返り
詳しくは、資料を見てください。ここでは、簡略に内容を示します。
初期投資(イニシャルコスト)として58億円以上、年間費用(ランニングコスト)が5.5億円以上かかるとしています。また、復旧期間として10年以上を要し、列車本数はJRが運営する場合は9往復(18本)、運賃は現状と同じとなることが記されています。
次に、鉄道での復旧の際の費用分担について説明されています。JRが単独で復旧する場合は、初期費用58億円・年間費用5.5億円を負担します。
施設の所有権はJRが保有したままで、運行と車両部分はJRが負担し施設と土地にかかる費用については自治体が補助金の形で投入する「みなし上下分離」で算出しています。この場合は、国からの補助金を活用できる部分は、国・自治体・JR西日本で3分の1となる各10.6億円となります。補助金の対象外の部分の26億円は、自治体とJR西日本とで協議することになります。
中国運輸局からの第3セクターへ移管した場合の補助について
前回の宿題であった、第3セクターへ移管した場合の国からの補助制度の説明がありました。これについては、JR側は「みなし上下分離」を想定しているので対象となります。主に「社会資本整備総合交付金」を活用する形となります。税制面については、国税である「登録免許税」以外の「不動産取得税」・「固定資産税」については、岡山県の第3セクター鉄道の井原鉄道に対して行っている減免処置を地方自治体が講じればよいので特に問題とする必要はないと思います。
鉄道以外のモードでの復旧
資料の19ページでJR西日本から次のように意思表示がありました。
美祢線が担っていた輸送の機能を概ね補完することを基本とし、様々な観点で地域の
第4回復旧検討部会資料19ページより
実情や変化に鉄道より低コストで対応できる、BRTによる復旧が適当ではないかと
考えています。
はっきりと鉄道以外での復旧(BRTを前提)を考えていることを明言しています。BRTもしくはバス転換でなければ運行しないということです。第3セクターでの継続であれば、今の情勢ですぐに手を離すことは難しいので(法律上は届を出せばいいことになっていますが)、移管に対しての協力は得られるでしょう。
費用負担の概算は次のように示されています。前提条件として、本数は1.5倍の27本・DV車での運行・BRTの場合、専用道として貞任第5踏切~厚保駅を設置となっています。
- BRT 復旧費用 55億円(国 18.3億円 地方自治体 3.7億円(特別交付税が措置された場合) JR西日本 18.3億円) 単年運行費 JR西日本 2.5億円 工事期間 約3~4年
- バス 復旧費用 9.6億円(国 3.2億円 地方自治体 0.6億円(特別交付税が措置された場合) JR西日本 3.2億円 単年度運行費 JR西日本 2.5億円 工事期間 約1~2年
と見積もられています。なお、「社会資本整備総合交付金」を活用するためには、地域公共交通特定事業の実施計画を策定し、国の認定を受ける必要があるためすぐには着工できません。
現在、富山県の氷見線・城端線・高山本線(猪谷ー富山間)が第3セクター「あいの風とやま鉄道」に経営移管、石川県の「北陸鉄道」がみなし上下分離、さらに大糸線(南小谷ー糸魚川間)を「えちごトキめき鉄道」社長の個人的な希望としてJR西日本からの経営移譲、さらに岡山県の吉備線(桃太郎線)のLRT化と「社会資本整備総合交付金」を活用しての鉄道経営を計画が進んでいます。補助金なので、予算の上限額に達したらもらうことはできなくなります。
BRTで復旧した場合の地域公共交通イメージ
JR西日本は、BRTを前提として考えているため、BRTでのイメージのみ記されています。
- 専用道による鉄道と同等の速達性と定時制の確保
具体的は、厚保駅~湯ノ峠駅間を示し鉄道では7分のところをBRTでは9分(代行バスは31分)を例として挙げています。なお、2022年の湯ノ峠駅の利用者数は3人です。ここだけ、別にタクシーを走らせいるので、BRT化すれば別の区間と路線を統一できるので利用者数が3人でも十分にメリットとなります。
- 災害等に対し、高い運行安定性の確保
専用区間以外は、一般道路を通行しますので災害の際には別ルートに容易に変更ができるでしょう。
- 観光コンテンツとしての活用
BRTは、珍しいので観光の目玉となるでしょう。ただ、美祢線沿線の大きな観光地は長門湯本温泉ぐらいなので、同じ美祢市内の秋吉台、山口市の城下町・湯田温泉、萩市内の観光スポットなどと周遊できる公共交通体制を山口県と協力して構築する必要があると思います。観光客の入り口となる厚狭は、「こだま」が1時間1本の運転ですので「さくら」「ひかり」の観光に最適な時間の停車もしくは、新山口駅との連携が必要となるでしょう。新幹線は、同じJR西日本の運行ですのでそこは、お得意のところだと思います。
- 最先端の社会課題解決技術・手法を導入
- 美祢線代行バスよりも早い所要時間での輸送サービスを提供
代行バスで81分のところを鉄道並みの62~72分で厚狭ー長門市間を結びます。約10分~20分の短縮となるので歓迎されるでしょう。
- 移動時間について高い信頼性を確保
- 今より細やかにご利用ニーズに応えた輸送サービスを提供(鉄道の時の18本→27本)
- バリアフリーな環境の整備
BRTを提案しているので当然ですが、メリットを強く示しています。どれについても利用者目線では良いことになっています。
代行バスによる実証実験
- 代行バスを増便した2024年12月の利用者数は前年の400人から440人へと10%増加
輸送密度ではなく利用者数です。やはり、時間がかかり定時制の確保の難しいバスだと厳しい数字になっています。美祢駅を境に南北に利用者が分かれるため、輸送密度としては約半分の220人ぐらいでしょう。これ以上の利用者の減少を防ぐためには、早期の復旧が求められます。
- 実証快速便の利用状況
12月一か月間の人数が記載されています。一番多い厚狭駅が2,508人で、1日11本(1本は土休日運休)です。バス1本あたり7.6人になりますが報道で学生でバスはいっぱいだと聞いていたので少し驚いています。
まとめ
第3回の復旧検討部会において、JR西日本はBRTを視野に入れて検討しているとの立場を示しました。これを受けて、自治体側は検討に入りますが代行バスが続くことにより利用者が減少しているので早めの決断が必要でしょう。また、「社会資本整備総合交付金」が受けられるかどうかという問題もあるのでなおさら急ぐ必要があると思います。どの決断をするにしても地元住民・観光客が使いやすい交通手段であることを望みます。
前回の美祢線の記事となります。
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