2022年(令和4年)3月のダイヤ改正によって、野洲ー長浜間の新快速が毎時2本から1本に減便となりました。そこで、入手可能なデータから理由を考えてみたいと思います。
JR西日本ホームページより
データ
輸送密度
まずは、JR西日本が公開している数値です。2020年度以降は、北陸本線(米原ー敦賀間)が、近江塩津を境に別の区間して公表していますので、こちらで計算して出しています。
区間 | 2018年度 | 2020年度 | 2022年度 | 2023年度 |
米原ー京都 (東海道本線) | 121,748 | 84,526 | 100,979 | 107,473 |
米原ー敦賀 (北陸本線) | 17,931 | 7,143 | 14,214 | 15,320 |
2023年度(令和5年度)の数値を見れば、コロナ前の数値から東海道本線(JR琵琶湖線)で約88%、北陸本線で約85%まで回復しています。北陸本線の数値の回復が悪いのは、「しらさぎ」の利用者数の減少によると思われます。3月北陸新幹線敦賀開業が開業したのが2024年3月16日ですので半月ほどですが影響を受けているようです。
駅別利用者数
新快速停車駅と主な通過駅とに分けて見てみます。滋賀県および京都府がホームページで公表している数値です。
駅名 | 2018 | 2020 | 2022 |
長浜 | 4,507 | 3,284 | 3,723 |
田村 | 1,345 | 950 | 1,104 |
坂田 | 628 | 495 | 559 |
米原 | 5,514 | 3,754 | 4,636 |
彦根 | 10,717 | 8,194 | 9,057 |
能登川 | 7,201 | 5,748 | 6,037 |
近江八幡 | 18,121 | 13,853 | 15,093 |
野洲 | 14,900 | 12,273 | 12,863 |
守山 | 17,087 | 14,248 | 16,103 |
草津 | 29,632 | 23,947 | 27,446 |
南草津 | 30,755 | 21,172 | 25,383 |
石山 | 24,223 | 19,236 | 19,940 |
大津 | 17,290 | 14,522 | 16,075 |
山科 | 44,663 | 32,769 | 39,253 |
京都 | 200,426 | 121,178 | 149,406 |
合計 | 427,009 | 295,623 | 346,678 |
2018年度に対する割合 | 69.2% | 81.2% |
駅名 | 2018 | 2020 | 2022 |
南彦根 | 5,902 | 4,431 | 5,166 |
加瀬 | 3,061 | 2,628 | 2,764 |
稲枝 | 2,541 | 2,086 | 2,252 |
安土 | 2,769 | 1,948 | 2,019 |
篠原 | 2,156 | 1,813 | 1,942 |
栗東 | 12,348 | 9,262 | 8,819 |
瀬田 | 17,987 | 13,446 | 16,442 |
膳所 | 12,901 | 10,516 | 11,526 |
合計 | 59,665 | 46,130 | 50,930 |
2018年度に対する減少率 | 77.3% | 85.3% |
コロナ前とコロナ後の数値を比較すると、乗客数は、完全には回復していません。京都駅・山科駅は、湖西線利用者も含まれますのでその数値を引いて計算すると2018年度に対する割合は86.9%となります。恐らく、JR西日本はこれ以上の回復はないとの判断で減便を検討したと思います。新快速通過駅の利用者数は50,930人と結構大きなものがあります。また、新快速は12両編成(米原以北は8両編成)に対し、米原発の普通列車はラッシュ時以外は、6両から10両での運行となっています。それ故に、新快速列車普通列車が削減の対象となったと思われます。普通列車については、1時間あたり2本のまま残しています。普通列車として運行される北陸本線の米原ー長浜間は1時間あたり1本への減便になります。利用者数で考えれば4両編成で1時間2本は過剰なので仕方ないと思います。
鉄道ファンの方なら知っている人も多いと思いますが、「青春18きっぷ」の利用が輸送密度・乗客数に反映されるかは、JR西日本(JR旅客6社)ははっきりとした回答はしていません。しかし、岡山県のフェイスブックには、2022年7月1日に次のように記事が投稿されています。
【青春18きっぷ発売開始!】
全国の鉄道ファンの皆様、青春18きっぷの発売が始まりましたね!この夏は、「おか鉄フェス」で盛り上がる国鉄型車両の聖地・岡山県で、ローカル線に乗りまくりませんか?
そして岡山県からの切実なお願いです|・ω・。)”…チラリ
もし岡山のローカル線を気に入っていただけたら、ひと区間だけでも良いので「普通乗車券」で乗車して、利用者数アップに協力していただけないでしょうか。(残念ながら、18きっぷでのご乗車は利用者数に含まれないのです・・・。)
岡山のローカル線を未来に残すため、全国の鉄道ファンの皆様の“応援乗車”を心からお待ちしています!(;人;) オネガイ
晴れの国おかやま鉄道情報(岡山県県民生活交通課)より
この投稿が真実でないのであれば、JR西日本から削除の依頼があるはずです。しかし、今日(2025年2月5日)の時点でも削除されていません。岡山県の投稿である以上、一般の人は公式な情報と判断するでしょう。
乗客の数は利用の少ない区間であれば「ノリホ」を使うことで、また首都圏などの利用客数が多いところでは車体に搭載されている機械で測定できる「車両応荷重データ」を使うことで実際の人数の把握は可能なはずです。JRが公表していない以上推測になりますが、整理券・運賃・乗車券・ICカードでの利用状況を用いて輸送密度・駅別の乗車人員の計算をしているのでしょう。
今回取り上げた区間は、「青春18きっぷ」使用する際には多くの利用者がある区間です。ダイヤ編成においては、実際の乗客数を利用していると推測されます。それでもあえて新快速の減便を行ったのは積み残し等の発生がないと判断したのでしょう。
2022年(令和5年)のダイヤ改正は、コロナ後の利用実態に併せて昼間時間帯に新快速を草津ー米原ー長浜間で行いました。これは、輸送密度のデータだけでなく実際の数値を見て問題がないと判断したものと思われます。一方で、ダイヤ改正の際に出される資料は実際の数値を反映していないデータを根拠として使っていると思われます。
結局は、地元利用者・観光客(通常のきっぷの利用者と往復タイプのトクトクきっぷ)の利用次第という結論に達しました。積み残しが発生しない限り今後もJRは輸送密度を理由にダイヤを編成するでしょう。
2025年(令和7年)関西地区のダイヤ改正情報です。新快速には言及されていませんでした。
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