北陸新幹線小浜先行開業について #メリットが全くないが・・・

北陸新幹線小浜先行開業の可能性 新幹線

 福井県の杉本達治知事は、1月9日の記者会見で北陸新幹線新大阪延伸について、小浜市までの先行開業を検討すべきとの考えを示しました。米原ルートに対しての牽制であると思われます。一方、小浜ルーを支持する自民党の与党整備委員長である西田昌司参院議員ですら否定的な発言をしています。小浜先行ルートの可能性について検討したいと思います。

整備新幹線を作るための条件

 整備新幹線(長野新幹線以後に作られたJRが運用する新幹線)を作るためには、5つの条件を満たす必要があります。

  • 安定的な財源見通しの確保

 整備新幹線開業に伴う経費のうち営業主体であるJRが支払う線路使用料を除いた金額の3分の2を国が、残り3分の1を地方自治体が負担する必要があります。現在、与党が衆議院で過半数を割っている状況を考えると予算そのものが確保できない可能性があります。一方で、滋賀県・京都府・大阪府には、負担が発生しませんので福井県の考え次第となります。

  • 収支採算性

 整備区間ごとに新幹線を作ることによる収益と作らない場合の収益について計算し、作る場合の受益がプラスになる必要があります。小浜線は、輸送密度が894、2021年度からの営業係数が754であり存廃の議論の対象になってもおかしくない状態です。さらに、敦賀ー小浜間の営業キロが49.5キロであり指定席利用で通常期で2,400円、自由席利用で880円となると予想され運賃860円を考えると利用があまり見込めず在来線利用からの転移は、ほとんどないと思われます。したがって、収支採算性の観点では、厳しいでしょう。

・投資効果

 一般的に、B/Cと呼ばれる費用便益比(新幹線を作ることによる経費とそれによる経済効果との比)が1以上である必要があります。単純に新幹線着工区間だけでなく関連する他の地域への経済効果も含めて計算されます。2016年に小浜・京都ルートでは、総便益8,600億円の対し総費用は8,000円億円でありB/Cは1.1でした。それから8年がたち人件費・物価の高騰などの社会状況に変化により、工費が約2兆円から倍以上になるとされています。京都・新大阪まで開通した場合の試算ですので、小浜までの先行開業では数値はかなり低くなると想像されます。

・営業主体であるJRの同意

 敦賀ー小浜間については、JR西日本の運営になりますが、小浜市に新幹線停車駅の東小浜駅については、現況の輸送密度から勘案すると収入がほとんど見込めないためJR西日本が受け入れることは難しいと思われます。

・並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意

 京都・小浜ルートについては、小浜線は並行在来線とは考えられていないため、問題はないででしょう。

可能性の検討

 整備新幹線着工5条件について、並行在来線以外の4つの条件については満たすのは困難であると思われます。従って、現在の枠組みの中では小浜先行開業はないと判断します。さらに、北陸新幹線については、京都府の工事が一番時間がかかる(ただ、条件の見直しをするという意見もあるためその議論の方向次第では、京都府南丹市の美山町知井地区が建設残土による環境の悪化の懸念に加え京都市内は、大深度地下(地表から40メートル以下)のトンネルになるためお酒に使用する地下水の問題を抱えています。京都府や京都市も否定的な反応であり、北陸新幹線そのものが新大阪まで延伸されるかが不透明な状勢です。そのため、小浜まで開通してもその先は作られないという可能性も十分にあります。

まとめ

 北陸新幹線小浜先行開業は、可能性としてはほぼないと思います。ただし、与党内で着工条件見直しについての議論もあるためそれ次第では状況が変わるかもしれません。私の私感ですが、山陰新幹線とセットでの着工の可能性のほうが高いと感じます。

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