山陰地方と山陽地方を結ぶ路線(いわゆる陰陽連絡線)には、上郡ー鳥取間(智頭急行+因美線 今後智頭急行と表記)、岡山ー鳥取間(津山線+因美線 今後因美南線と表記)、倉敷ー伯耆大山間(伯備線)、広島ー三好ー備後落合間(芸備線+木次線 今後木次線と表記)、新山口ー益田間(山口線)があり、智頭急行・伯備線以外の路線については路線の存廃が議論されようとしているもしくは議論されている現状です。上郡ー鳥取間については、厳密には連絡連絡線ではありませんが急行「砂丘」の代わりの路線となっていますのでここでは、含めて考えたいと思います。
各路線の現状
まずは、各路線の現状を見てみましょう。
智頭急行
- 対象地域 鳥取県東部および鳥取県中部(鳥取市、倉吉市など) 人口約31万人
- 所要時間 1時間15分(上郡ー鳥取間)
- 優等列車 14往復(スーパーはくと8往復・スーパーいなば6往復)
- 2019年度輸送密度 2472(上郡ー智頭)、3512(智頭ー鳥取)
- 貨物列車 なし
1994年6月に開業された第3セクター運営の路線。岡山駅からの「砂丘」および関西地方からの「はまかぜ」(大阪発)・「あさしお」(京都発)の代わりとして設定され、所要時間の短縮に大きく貢献しています。関西方面へは、高速バスが1時間1本程度運行があり都市間輸送は結構あると思われます。また、「スーパーはくと」は山陽本線・東海道本線経由で車両が乗り入れするためJR西日本から入る車両使用料が多く経営は比較的安定しているといえるでしょう。
津山線・因美線
- 対象地域 鳥取県東部および鳥取県中部(鳥取市、倉吉市など) 人口約31人
- 所要時間 3時間51分(岡山ー鳥取間)
- 優等列車 なし
- 2019年度輸送密度 3588(津山ー岡山)、179(東津山ー智頭)、3512(智頭ー鳥取)
- 貨物列車 なし
かつては、急行「砂丘」岡山ー鳥取間を約2時間40分で結んでいた鳥取県東部・中部地方とのメインルートだった路線。特に山陽新幹線開通後は、関西からも最短ルートでした。智頭急行開通後は、その座を失い地域輸送に特化しているため列車の接続もよくなく陰陽連絡船としての役割を失っています。
伯備線
- 対象地域 鳥取県西部および島根県出雲地区 人口約72万人(米子市、松江市、出雲市など)
- 所要時間 1時間40分(岡山ー米子間)
- 優等列車 16往復(やくも15往復、サンライズ出雲1往復)
- 2019年度輸送密度 5496(倉敷ー伯耆大山)
- 貨物列車 あり(4往復)
山陰最大の人口を持つ鳥取県東部および鳥取県中部を結ぶ陰陽連絡線の。1928年に乙線として全通するものの広島と同地区を結ぶ急行「ちどり」の存在もあり当時は重要視されていなかった。ところが、1972年に山陽新幹線新大阪ー岡山間の開業により山陰地方とのメインルートに昇格。優等列車の本数も増えていき現在の地位にあります。
芸備線・木次線
- 対象地域 鳥取県西部および島根県出雲地区 人口約72万人(米子市、松江市、出雲市など)
- 所要時間 6時間41分
- 優等列車 なし
- 2019年度輸送密度 7987(広島ー狩留家)、713(狩留家ー三次)、215(三次ー備後落合)、190(備後落合ー宍道)
- 貨物列車 なし
かつては夜行も含め優等列車急行「ちどり」が4往復設定されていた広島から山陰へのメインルートでした。山陽新幹線岡山開業により、岡山経由のほうが所要時間が短くなったことと高速バスにその座を奪われ広島市付近とその他の地域とで様相が変わるルートとなっています。1日で行く場合、広島11時02分発の1本のみ。宍道駅の乗換案内がかつての栄光を放っています。
山口線
- 対象地域 島根県石見地区 人口約18万人(益田市、浜田市など)
- 所要時間 約1時間40分
- 優等列車 3往復(スーパーおき)
- 2019年輸送密度 1524(新山口ー益田)
- 貨物列車 なし 2018年西日本豪雨の際は、伯備線、山陰本線、山口線経由でされた。
SL山口号で有名な路線。優等列車は、国鉄民営化の時から本数は変わらないが、普通列車は、11本から7本に減っており利用客は、益田側では大きき減っているもよう。新山口側は25本から28本に増えており利用客よう減少はそこまで大きくないようである。広島からだと高速バスでの移動がメインとなっています。宮野駅以北は輸送密度が分けて公表されている2023年度の数値では、531人(宮野ー津和野)、479人(津和野ー益田)であり、特急利用者の数字を含めての数字であり、県境区間は厳しい状況となっています。
普通列車の利用状況(智頭急行・伯備線)
智頭急行と伯備線では、山陰への特急利用者多いため比較的輸送密度が大きくなっていますが普通列車の利用はどうでしょうか。智頭急行は、輸送密度ではなく輸送人員ですが2019年の値が公表されています。それによれば特急が2319人、普通列車が749人となっています。普通列車の乗客が全区間乗車することはほとんどないため輸送密度は300人程度ではないかと思います。今後競合する交通手段は計画されていないので「スーパーはくと」のJR乗り入れがある限りは、存続可能だと思います。
伯備線の県境区間である新見ー生山間について見てみたいと思います。この区間の駅別の利用者数は次のようになっています。
伯備線駅別利用者数(2019年度)
駅名 | 利用者数 |
---|---|
新見 | 733 |
備中神代 | 7 |
足立 | 4 |
新郷 | 6 |
上石見 | 14 |
生山 | 160 |
県境を越えての移動は、ほとんどないため普通列車の輸送密度は、大きく見積もっても28人の2倍の56と思われます。この数字は、芸備線の備中神代ー東条間の81よりも小さいです。普通列車の新見駅からの輸送密度は、米子方面が一番少なくなります。中国横断新幹線(伯備新幹線)が将来建設されると伯備線の県境区間は並行在来線となるためかなり厳しい状況に追い込まれることが予想されます。貨物列車があるとはいえ4往復しかないため廃線となる可能性が高いでしょう。
まとめ
陰陽連絡線の中で最も輸送密度の高い伯備線ですが、県境部分の新見ー生山間については、普通列車の利用者数でみると一番少なくなります。中国横断新幹線(伯備新幹線)が建設されるとなると在来線県境部分の存続はかなり難しいでしょう。実際、青春18切符利用期間と比べ普段はかなり少ないのが印象です。今は、115系2両でワンマン運転がされていましたが将来的にはキハ120系での運行に変わる可能性も考えられます。1両だと米子近辺の供給がたりないため時間帯によっては、2両必要ですが227系500番台(Urara)の車両投入数次第では考えられると思います。今回は、特急列車によって輸送密度が大きくなり利用実態があまり知られていない伯備線の話でした。
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