第三セクター鉄道の成功例として知らていた平成筑豊鉄道は、経営難を理由に2024年6月28日に沿線自治体(田川市・直方市・行橋市・小竹町・香春町・糸田町・赤村・福智町・みやこ町)に対して法定協議会の設置を要請しました。そこで、平成筑豊鉄道のたどった経緯を見てみたいと思います。
平成筑豊鉄道ホームページ
平成筑豊鉄道の歴史
平成筑豊鉄道は、第3次廃止対象特定地方対象線となった福岡県の「伊田線」・「糸田線」・「田川線」を引き継ぐための第三セクター会社として設立され、1989年(平成元年)10月1日にJR九州からこれらの路線の運行を引き継ぎました。また、当時は井田線(直方ー金田間)でセメントの貨物輸送が行われておりJR貨物から運行を引き継ぎました。
路線移行後は、新駅の設置・列車運行本数の増加といった積極的な運営を行い全国的にも第三セクターの成功例として注目を浴びました。2004年(平成16年)には、セメント貨物輸送が廃止となり貨物運送からは手を引きました。
2009年には、北九州市が所有する門司港レトロ観光線(北九州銀行レトロライン)でのトロッコ列車の運行を開始しました。
平成筑豊鉄道の路線
伊田線
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当初から運行している路線でJR筑豊本線と接続する直方駅からJR日田彦山線と接続する田川伊田駅を結ぶ路線です。利用者が一番多く本線的な存在となっています。
- 運転区間 直方駅ー田川伊田駅 16.1キロメートル
- 駅数 15
- 軌間 1,067ミリメートル(狭軌)
- 複線・非電化
- 最高速度 時速95キロメートル
- 運営形態 第一種鉄道事業事業者
糸田線
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こちらも当初から運行している路線です。金田駅からJR日田彦山線とJR後藤寺線の二つの路線との接続駅である田川後藤寺駅を結ぶ路線です。
- 運転区間 金田駅ー田川後藤寺駅 6.8キロメートル
- 駅数 6
- 軌間 1,067ミリメートル(狭軌)
- 単線・非電化
- 運営形態 第一種鉄道事業者
田川線
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上の二つと同じく1989年(平成元年)からJR九州から引き継いだ路線です。田川井田駅からJR日豊本線の行橋駅を結びます。
- 運転区間 行橋駅ー田川伊田駅 26.3キロメートル
- 駅数 16
- 軌間 1,067ミリメートル(狭軌)
- 単線・非電化
- 運営形態 第一種鉄道事業者
門司港レトロ観光線(北九州銀行レトロライン)
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北九州市の九州鉄道記念館駅から関門海峡めかり駅を結ぶ鉄道路線です。JR貨物が運行していた鹿児島本線貨物支線(門司港駅ー外浜駅)と田ノ浦公共臨港鉄道の廃線区間を結ぶ観光特化型の路線です。2009年(平成21年)4月26日に開業しました。
- 運転区間 九州鉄道記念館ー関門海峡めかり駅 2.1キロメートル
- 駅数 4
- 軌間 1,067ミリメートル(狭軌)
- 単線・非電化
- 運営形態 第二種鉄道事業者(所有は北九州市)
所有する車両
- 400形(10両・ロングシート)
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400系としては、12両ありますが、その内2両は「コトコト列車」に改造されています。「伊田線」・「糸田線」・「田川線」で運行されます。
- 500形(1両・ロングシート)
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元々は、転換クロスシート車で観光列車用に作られた車両です。2024年(令和6年)にロングシート化され、自転車の持ち込みも可能になりました。
- 400形ことこと列車(2両)
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水戸岡鋭治氏がデザインした車両で、地元産食材を使ったフレンチ料理が楽しめる列車です。料金は、大人19,800円、子供16,800円となっています。直方駅から行橋駅を3時間20分かけて走行します。2025年4月5日(土)~2026年3月31日(火)の期間の土日祝日に運行します。受付期間は、各出発日の前日より起算して10日前まで。締切日が土日祝日にあたる場合はその直前の受付日までとなっています。車窓とフレンチ料理5品が楽しめるちょっと贅沢な列車です。
- 門司港レトロ観光線用車両(DB10形2両、トラ70000形2両)
ディーゼル機関車2両と客車の2両です。
平成筑豊鉄道の現状
利用者数
路線ごとの輸送密度は公開されていませんが、2019年(令和元年)度で805(国土交通省資料より)となっておりかなり厳しいものとなっています。また、駅別の乗降客数は、平成筑豊鉄道のホームページで開業した1989年(平成元年)から2024年(令和6年)までの数値が公開されています。
平成筑豊鉄道ホームページ
これを見ると1994年(平成6年)の19,489人をピークに減少して行っています。直近の2024年(令和6年)では、約3分の1である6,518人となっています。乗降員数ですので、乗車数は半分の3,259人となります。単純に計算できませんが、開業当時は輸送密度は約2,400程度で貨物輸送の輸入があったため採算は取れていたものと考えられます。
列車本数
JR発足時の1988年(昭和63年)・2000年(平成12年)・2024年(令和6年)のダイヤで比較してみます。門司港レトロ観光線は、観光列車のため除外しています。
路線名 | 1988年 | 2000年 | 2024年 |
伊田線 | 17往復 | 40往復(内1往復は直方ー金田区間列車) | 直方ー金田 34往復 金田ー田川伊田 下り27本上り26本 |
糸田線 | 下り9本・上り10本 | 29往復 | 18往復 |
田川線 | 10.5往復 (下り10本・上り8本は田川後藤寺駅まで運行) | 下り39本(内14本は区間列車)・上り38本(内13本は区間列車) | 20往復(内1往復は行橋ー犀川間の区間列車) |
第三セクター転換後に大規模な増便を行いましたが、利用者の減少によって最近は減便が続いているようです。輸送密度からすると、だいぶ苦しいのが現状でしょう。今回の法定協議会の設置を機に色々と検討することが必要だと思います。路線の総距離が約50キロメートルぐらいですので本来なら車両数的にも厳しいと思われます。
今後のあり方について
2024年(令和6年度)に、追加の支援として1億5000万を沿線の9市町村が追加で投入します。これで補助金は4億5400万円となります。規模の大きな自治体がない沿線では、これ以上の拠出は困難だと思われます。以下の方法が検討に上がるのでしょう。
現行のままを維持
利用者的には一番良い方法ですが、自治体が負担に耐えられないと思います。沿線の人口減少により利用者が減り赤字が膨らむでしょう。最終的には、税金の引上げ等の住民の負担が必要になるでしょう。可能性としてはほぼないと考えます。
減便を行い鉄道を存続
これまでの方法を続ける形となります。この選択とすると利用者が減少し、減便をするスパイラルに落ちるのは明白です。列車の本数が毎時1本を割ると一気に利用者が減少することになり自治体の負担が増すのは明白です。最終的には、廃線となるのではないでしょうか。
上下分離
上下分離をしても、維持費を自治体が負担することになりあまり意味がないでしょう。JRの場合と違い自治体の負担は変わらないと思います。上下分離に係る費用を考慮すると負担がかえってますでしょう。
バス転換
ランニングコストは抑えれるでしょうが、バスドライバーの確保・定時制の維持・所要時間の増加が問題として考えられます。都会ですらバスドライバーの確保が問題となっている今の状況ではかなり難しいと思われます。
まとめ
平成地方鉄道については、決定的な解決方法はないと思います。また、関係する自治体が9市町村あるというもの決定を行う上で障害となるのは明らかです。正直なところ、利便性が高い状態で赤字額が大きい鉄道のため相当困難な問題だと思われます。住民から見てもどうするのがよいか決められないでしょう。芸備線・大糸線のように結果が分かっている路線ではないだけに今後の動きが注目されます。
同じ第3セクターの鉄道で山口県岩国市で錦川清流鉄道についての記事です。興味がある方はご覧ください。
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