山陰と山陽を結ぶ山口県を走るJR美祢線(厚狭駅ー長門駅)は、2023年の豪雨災害によ全線不通となり2023年7月4日よりバス代行を行っています(一日10往復、所要時間約1時間20分)。また、10月1日より快速便5往復(所要時間 約1時間5分)を試験増便をしています。昨日、沿線自治体を代表して美祢市の篠田洋司市長がJR西日本中国統括本部の広岡研二 広島支社長に対し、3月22日以降の快速便の継続を求めましたが前向きな回答は得られませんでした。
美祢線について
美祢線の生い立ち
JR美祢線は、1924年(大正13年)に開通した路線です。初めは、山陽鉄道が1905年(明治38年)に厚狭駅から大嶺駅までを開通させたことにはじまり、1906年(明治39年)に国有化された。また、美祢軽便鉄道が1916年に伊佐駅ー重安駅間を開通、こちらも同様に1920年(大正9年)に国有化されました。
1924年(大正14年)に、長門市駅(当時は正明市駅)まで開通し美禰線と名称が変わります。その後、宇田郷駅、仙崎まで延伸しましたが最終的には、山陰本線に編入され1963年(昭和38年)に美祢線と改称。1997年(平成9年)4月1日に大嶺ー南大嶺間8(大嶺支線)が廃止されて今の形となっています。
美祢線は、国鉄時代においても輸送密度が4,000を下回っていましたが、UBE三菱セメント(当時は宇部興産)の石灰石輸送による貨物輸送密度が4,000t以上あるため廃止対象とはなりませんでした。しかし、国鉄時代に労働組合によるストライキが響き1975年(昭和50年)に、200億円を使って専用道路が引かれ貨物輸送量が激減してしまいました。中国電力三隅発電所への輸送のためDD51重連での山陰本線岡見駅までの貨物輸送(岡見貨物)は残りましたが、2014年(平成26年)をもって廃止され旅客運送のみとなりました。
美祢線のダイヤと利用状況
被災前の美祢線の運行状況は以下の通りです。
- 運高区間 厚狭ー長門市間(運用の都合上、長門市から山陰本線仙崎支線の仙崎駅まで一部列車が乗り入れ) 46.0キロメートル 12駅
- 列車本数 9往復(18本)
- 駅の所在する自治体 山陽小野田市、美祢市、長門市
- 所要時間 約1時間
- 路線形体 非電化単線(美祢駅、長門湯本駅、板持駅以外は交換可能)
- 使用される車両 キハ120系(朝の2往復を除き単行)、全列車でワンマン運転
- 輸送密度 478(2019年度)
- 営業係数 630(2017年度から2019年度の平均)
- 他の路線との接続 厚狭駅:山陽新幹線・山陽本線、長門駅(山陰本線、山陰本線仙崎支線)
また、輸送密度は次のように推移しています。1987年度は、大嶺支線廃止前のため大嶺ー南大嶺間の数字での値となります。なお、2023年度は、豪雨災害により7月4日以降は代行バスでの実績で算出。
年度 | 輸送密度 |
1987 | 1,741 |
2013 | 579 |
2014 | 550 |
2015 | 574 |
2016 | 562 |
2017 | 636 |
2018 | 541 |
2019 | 478 |
2020 | 366 |
2021 | 366 |
2022 | 377 |
2023 | 300 |
代行バス
JR美祢線利用促進協議会のホームページに、試験増発の快速便5本を含めたバスダイヤが掲載されています。
JR美祢線利用促進協議会ホームページより
2024年12月1日から、厚狭駅ー長門市間で快速が5本設定され、長門市行きが14本、厚狭行きが16本設定されています。長門市方面の本数が少ないですが、これは通学需要が多いため輸送力不足になり2台で運転されているダイヤがあるためと思われます。所要時間は通常便で約1時間20分、快速便で約1時間5分となっていますが通常便で約20分、快速便でも約5分余分に時間がかかります。また、湯ノ峠駅へは、駅が道路と離れているため9往復別便で対応しています。湯ノ峠駅の利用者は、1日あたり5人(2019年度)ですので増発は行われていません。
復旧に向けて
周辺自治体は、美祢線復旧に向けてJR美祢線利用促進協議会を立ち上げJR西日本と交渉を進めています。地元は鉄道での復旧を望んでいますが、復旧費用が約58億円と高額なうえに河川の改良工事が最低条件とJR西日本側から示されています。また、工事期間は、河川の改良工事を含めて15年程度となり長期間の運休は避けられない状況です。そのため、JR西日本としては、単独での復旧とその後の運営は厳しいとの立場をとっています。美祢線は2010年にも豪雨災害で不通となっており今後の罹災の可能性を考えれば仕方ないことだと思われます。
JR美祢線利用促進協議会ホームページより
また、2024年12月19日に開かれた第3回復旧検討部会では、JR西日本はみなし上下分離での運行は考えていないとの意見を伝えています。
JR美祢線利用促進協議会ホームページより
JR西日本は、鉄道位階での復旧(BRTもしくはバス転換)であれば協力はできるとの立場ですので第3セクターへの移管もしくはバス転換を含めた方向で話は進んでいくのではと思います。
まとめ
JR美祢線は、利用者数の低迷および災害のリスクが高いため鉄道での復旧は困難でしょう。復旧に15年かかるとなれば、そのころには人口は大きく減少(特にローカル線の主な利用者である学生)することは確実であり、JR西日本では呑めない話だと思います。また、第3セクターに転換するとしても自治体の財政に大きな影響を与えるため厳しいでしょう。バスドライバー不足が言われているなかで、代行バスを鉄道の本数以上に確保できてるのは奇跡的状況です。鉄道ファンとしては残念ですが、バス転換を検討しJR側からより多くのものを得るのが得策だと考えます。
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