1月15日(金)の早朝に特急「やくも2号」が故障のため運休するトラブルがありました。現状では、米子・松江地区への鉄道での輸送は「やくも」によって行われています。2024年以降新型車両が投入されましたが以前よりは車両数が減少しています。実際のところ大丈夫なのでしょうか。
「やくも号」の歴史
特急「やくも」号は、1972年(昭和47年)3月15日の山陽新幹線開業により関西地区・岡山地区から山陰地区を結ぶ特急として設定されました。「やくも」の愛称自体は、1964年(昭和39年)10月1日のダイヤ改正で登場(実際の運行は11月1日)した新大阪から福知山線経由の浜田行き列車が先になりますが、1日1本の設定したので鉄道ファン以外にはほとんど知られていないと思います。
当初は、伯備線は電化されていませんでしたので食堂車込みのキハ181系11両編成により運行されていました。当時は、岡山駅から米子駅まで3時間かかっていたので食堂車の需要があったのでしょう。また、一部の列車は益田駅までの運行でした。
1982年(昭和57年)7月1日の伯備線および山陰本線伯耆大山駅~知井宮駅(現:西出雲駅)間の電化により381系電車での運行に変わり1日8往復となりました。その後、利用者の増加により本数を増やし現在では、1時間に1本の運行で15往復設定されています。
そして、2024年(令和6年)には、新型車両273系に置き換えられました。
「やくも号」の現況
現在の「やくも号」の設定は以下のようになっています。
- 運転本数 1日15往復(岡山駅~出雲市駅)
- 所要時間 岡山駅~米子駅 約2時間15分、岡山駅~松江駅 約2時間40分、岡山駅 約3時間10分
- 車両 273系4両編成(多客期には、8両編成で運転)
- 停車駅 全列車停車 倉敷駅・備中高梁駅・新見駅・米子駅・安来駅・松江駅 一部列車が停車 総社駅・生山駅・根雨駅・伯耆大山駅・玉造温泉駅・宍道駅
- 全車指定席
273系車両について
381系での運行時は、需要に応じて編成の組み換えを行い4両~9両での運行となっていましたが273系は4両の固定編成(定員169名)となっています。車両数は381系の時は66両でしたが、287系は11編成44両の配置となっています。全車両後藤総合車両所出雲支所所属となっています。編成数11に対して8運用となっています。
なお、現在の後藤総合車両所出雲支所の現状は次のようになっています。
1月15日の車両故障について
JR西日本からの正式な発表はありませんが、「やくも2号」が電気系統のトラブルを起こし江尾駅~黒坂駅間で車内の室内灯が客室内の室内灯がついたり消えたりしたようです。生山駅で運転を打ち切り後続の「やくも」に乗り換えをしたらしいです。土曜日の朝の列車ということもあり積み残しは出なかったようですが、「やくも」4本・他の列車4本(恐らく「サンライズ出雲」も含まれていると思います。)に影響が850人ですので、時間帯によっては輸送力不足となる可能性も考えられる状況です。
他の交通手段
伯備線は、高梁川・日野川に沿って走る区間が長く落成・倒木などによって運休となることがよくあります。不通時の代替手段としては、高速バス(岡山~米子・松江)が5往復・路線バスが岡山~倉敷間で1日2往復、岡山~高梁間で1日5往復(岡山~総社間は吉備線沿いを走行しますが総社駅には入りません)となっておりほとんど機能していません。関西地区であれば「スーパーはくと」を使う方法もありますが本数が少なく時間もかかるのであまり使われていないようです。
バス代行をするとしても、岡山市中心部を除き路線バスは少なく(倉敷駅から倉敷市役所の間でも1時間2本です。)、運航休止時には途中の駅で待つ場合が多くなります。
実際、44両で足りるのか
JR西日本の発表によれば、新見~伯耆大山間の輸送密度は2023年度で2,993となっています。この区間は、特急列車の利用者が大半を占めるため273系の輸送力は、30往復で5,070人ですので多客期には厳しいと思われます。また、287系は自然振り子式列車ですので他の地区から借りてくることもできません。
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283系「オーシャンアロー」を短編成化して予備車にするという予測も出ていましたが、春の臨時列車にそういった内容はありませんでしたので恐らくないでしょう。いくら新車とはいえ衝突事故・落石などにより車両が使えないケースは十分にあると思います。それを考慮すると、あと2編成くらいは必要ではないでしょうか。
どうするのがよいか
伯備線の利用者数は、近年減少傾向が進んでいます。2013年度(平成25年度)の輸送密度6,514から2023年度(令和5年度)には4,798と約4分の3に落ちています。将来的には273系の1編成あたりの定員169人でさえ過剰となる可能性がありますので273系の編成数を増やすのは得策ではないと思います。そこで、観光列車と併用できるタイプの車両を製作し、普段は特急列車のない広島・山口地区で使うのがいいのではないかと思います。
多客期には難しいですが、山陽本線沿線には観光地はたくさんあります。尾道・西条・呉・宮島など新幹線でのアクセスがよくないところもありますのでそういったところに岡山からの特急列車を設定すれば意外と観光客の乗車が望めるのではないかと思います。
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