このままでは、廃線→バス転換は不可避では? 3月26日開催の「芸備線再構築協議会」

備後落合駅 芸備線

 中国新聞の報道によると、3月26日(水)に開かれた「芸備線再構築協議会」において、JR側からの芸備線の「上下分離」「三セク転換」に対し、自治体側は反発の声が上がったようです。客観的に見れば、芸備線は、JRの運営で続けていくことは大変困難な状況にあります。当然自治体側も認識しているはずですがどうしてこういう形になってしまうのでしょうか。自治体・JRの置かれている立場を想像してみたいと思います。

芸備線再構築協議会、JR西日本の提案に自治体反発

中国新聞ホームページ

芸備線利用状況

該当区間のデータ

  • 備中神代駅~東城駅(18.8キロメートル)

 輸送密度は、2023年度で88となっています。この部分については、並行するバス路線がありませんので、芸備線が廃止になった場合には、代替交通について検討する必要が出てくる区間となります。関係自治体は、新見市(岡山県)と庄原市(広島県)になります。輸送密度が示すように、地元の利用(主に高校生の登下校)は、少ないとはいえそれなりにある区間です。

 列車本数は、1987年の国鉄最後のダイヤ改正時点では、8往復(1往復は、備後庄原駅から急行「たいしゃく」広島駅行き)ありましたが、現在は1日3往復(早朝・昼過ぎ・夜)となっています。

  • 東城駅~備後落合駅(25.8キロメートル)

 輸送密度は、2023年度で20となっています。ただし、この数字は廃線前の鉄道ファンの乗車によって一時的に上がっているとも言われています。コロナ前の2015年の8がこの区間の本来の姿を現していると思います。この区間は、芸備線は成羽川に沿って大きく迂回している区間となっており、市の中心地である庄原駅に向かう際は、バスと比べて時間的に大きなハンデを背負っている状態となっています(芸備線:約55分 一日3往復 バス:36分 一日5往復)。

 かつては、この区間は、急行列車も通っていましたが、現在は廃止され不通列車のみの運行形態となっています。国鉄最後のダイヤ改正の時点で8往復(1往復は、備後庄原駅から急行「たいしゃく」広島駅行き)ありましたが、現在は1日3往復(早朝・昼過ぎ・夜)となっています。一方のバスは、備後庄原駅まで一日5往復あり、芸備線の減便はバス利用の便利さに負けた結果と思われます。

 また、旧東城町の地域は、人口がそれなりにあり(2025年2月28日時点:6,466人)であり、中心部については、それなりの規模の町を形成しています。

  • 備後落合駅~備後庄原駅(23.9キロメートル)

 輸送密度は、2023年度で86となっています。この区間は、旧西城町が最大の町となります(2025年2月28日時点:2,832人)。備後西条駅と備後庄原駅間は、線形が比較的よいため鉄道利用客はそれなりにいます。そのため、列車本数も下り5本・上り4本設定されています。庄原市は、二次交通に問題があり(駅からのバスが不便・20時以降のタクシー利用が出来ない)、運営方法次第では輸送密度を100を超えるぐらいにまでは持っていける可能性はあると思います。なお、現在はオンデマンド交通での夜間の輸送・備北交通のバス事業への進出などの明るい話題もあります。

それぞれの見解

JR西日本

 基本的には、バス転換で考えているようです。鉄道として残すなら最低でも上下分離、できれば第三テクターへの転換の方針です。これについては、以前から主張していることであり輸送密度的には当然の首長だと思えます。今回の上下分離の話は初めて聞きましたが協議会の場では出てきていた話なのかは気になります。

岡山県・広島県

 どちらもJR西日本の運営で続けることを求めています。山陽新幹線・関西地区での収益による内部補助の活用での維持という考えで初めから一貫しています。

 岡山県では、今後協議が開催されるであろう因美線(東津山駅~智頭駅)・姫新線(佐用駅~新見駅)までの区間の事もあるので安易に補助金等を出すことについては慎重になっていると思われます。

 一方の、広島県も木次線(備後落合駅~出雲横田駅)の問題もあり、岡山県同様に簡単に税金からの支出はないと思います。また、こちらは芸備線よりも利用実績のあった、可部線(可部駅~三段峡駅)・三江線(三次駅~江津駅:こちらについては区間を切り取れば芸備線以下の輸送密度の所もあったと思いますが・・・)の事もあるので岡山県以上に話が難しくなっているものと思われます。そういう意味では、協議会に三次市・安芸高田市(三江線)と広島市(可部線)が参加していることは選択の幅を小さくする要因の一つとなっていると思います。

 参加自体すべにいえることですが、現在のJRによる形態をとることは税金からの支出が発生しないため伸ばせるだけ伸ばしたいというのが本音だと思います。

 本気で芸備線を残そうと考えているのであれば、岡山県・広島県はするべきことはすべきだと思いますし、行動で示す必要があると思います。

JR西日本

 JR西日本にとっては、一番実績のない芸備線を残すことは、他の路線について話をするうえで最大の障害となるのは明白です。最低でも上下分離という形に持っていきたいというのが本音だと思います。そういう意味では、何らかの結果を得たいという態度での交渉が続いていくものと思えます。記事では分かりませんが上下分離・バス転換の際の試算が出ているのであれば知りたいところです。

まとめ

 JR芸備線については、3月26日(水)に「芸備線再構築協議会」が開かれましたが大きな進展はありませんでした。現況を見ると期限の3年間までこの状態が続いていくのではないかと思います。

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