JR西日本から輸送密度1,000人以下の路線について優先的に路線の在り方について検討する方針が示されています。岡山県内にも対象路線は複数あり、議論が始まっています。そこで、対象路線について過去からの推移と現状を見てみたいと思います。
ローカル線内の主要都市について
岡山県北の主要都市は、次の市となります。なお、人口は国勢調査のデータです。
津山市
1985 | 2000 | 2010 | 2020 | |
人口 | 110,542 | 111,499 | 106,788 | 99,937 |
変化率 | 101% | 96% | 94% |
岡山県北を代表する都市です。人口については、減少に拍車がかかっているようです。また、中心部が津山駅から離れているためバス等の二次交通が必要です。しかし、津山市内を運行する中国鉄道(中鉄バス)は、経営不振のためかなりの減便を行っているうえ、鉄道との連絡はあまりよくありません。また、1997年(平成9年)には「作陽音楽大学(現:くらしき作陽大学)」が倉敷市へ移転・2023年には「作陽高校(現:作陽学園高校)が同じく倉敷市へ移転し、「作陽大学」も移転の市外への移転の計画があります。
新見市
1985 | 2000 | 2010 | 2020 | |
人口 | 44,019 | 38,492 | 33,870 | 28,079 |
変化率 | 87% | 88% | 83% |
新見市も、中心地区から駅が離れています。また、人口の減少ペースが大きく1985年と2020年とでは63.8%と大きく減少しています。今後もこの傾向に拍車がかかっていくものと思われます。市内の交通機関も脆弱なため鉄道利用は利便性が薄いのが現状です。
真庭市
1985 | 2000 | 2010 | 2020 | |
人口 | 60,196 | 54,747 | 48,964 | 42,725 |
変化率 | 91% | 89% | 87% |
2005年(平成17年)に9町村が合併し真庭市となりました。津山市・新見市と違い人口は結構ばらけています。新見市程ではありませんが人口の減少は大きいです。真庭市は、市役所などの公共施設が久世駅付近にあり鉄道利用自体は望める環境にあります。
輸送密度1,000以下の路線
芸備線(備中神代ー東城)
輸送密度 | 1987 | 2018 | 2023 |
備中神代ー東城 | 504 | 111 | 88 |
列車本数 | 1988 | 2000 | 2024 |
備中神代ー東城 | 下り 9 上り 10 | 下り 7 上り 7 | 下り 6(快速1) 上り 6 |
乗車人数 | 1990 | 2002 | 2018 |
備中神代 | 66 | 41 | 8 |
坂根 | 18 | 1 | 2 |
市岡 | 49 | 21 | 8 |
矢神 | 69 | 30 | 9 |
野馳 | 116 | 53 | 25 |
東城(広島県) | 224 | 30 | 11 |
車両は、キハ120系での単行運転です。
以前は急行列車のあった区間ですが高速バスにより東城駅以西との利用は減り、2021年時点ではほぼ新見駅への移動に使われており、東城駅以西への区間の利用はほぼなくなっているようです。それは、早朝の備後落合駅行きの快速列車が利用の多い野馳駅を通過していることからも説明がつきます。朝の新見(5時16分)発備後落合(6時34分)行き快速列車矢神駅での停車は、列車交換のためだけだと思います(現在この区間で列車交換ができるのは矢神駅のみ)。
朝のこの列車と備後落合(20時10分)発新見(21時36分)着は、備後落合駅での夜間停泊をしないための設定でしょう。以前は、三江線・芸備線・木次線から接続している設定となっていましたが、現在は昼間の1本のみが機能しています。東城ー備後落合間は、広島支社の管内にして、東城駅の跨線橋を修理し新見ー東城間の折り返し運転としたほうがいいと思われます。鉄道ファン的には、3支社の列車集結がなくなるので残念ですが。
2023年の輸送密度の増加は、廃線前のお別れ乗車によるものでしょう。実態は、50程度と思います。
姫新線(佐用ー津山)
輸送密度 | 1987 | 2018 | 2023 |
上月ー津山 | なし | 516 | 401 |
列車本数 | 1988 | 2000 | 2024 |
上月ー津山 | 下り 13(急行2) 上り 13(急行2) | 下り 12(美作江見止3) 上り 12(美作江見止3) | 下り 11(快速1・美作江見止2) 上り 11(快速2・美作江見止2) |
乗車人数 | 2000 | 2010 | 2018 |
上月(兵庫県) | 61 | 41 | 38 |
美作土居 | 54 | 39 | 28 |
美作江見 | 100 | 62 | 53 |
楢原 | 32 | 23 | 25 |
林野 | 202 | 131 | 116 |
勝間田 | 199 | 159 | 132 |
西勝間田 | 17 | 17 | 12 |
美作大崎 | 29 | 19 | 24 |
東津山 | 115 | 113 | 118 |
津山 | 2,398 | 2,122 | 1,923 |
車両は、キハ120系ですが、朝には2両編成の列車が1往復設定されています。
列車本数は、ほとんど変化がありませんが急行列車がなくなっています。その代わりに普通列車が1本増発されました。ただ、利用の少ない兵庫県との県境の区間は、減便されています。
輸送密度と乗車人員を見ると、緩やかな減少傾向ですが、新型コロナにより2018年以降は、少し減少のペースが上がっています。列車の設定から見るとほぼ津山方面への移動がメインとなっています。
姫新線(津山ー中国勝山)
輸送密度 | 1987 | 2018 | 2023 |
津山ー中国勝山 | なし | 813 | 661 |
列車本数 | 1988 | 2000 | 2024 |
津山ー中国勝山 | 下り 13 上り 15 | 下り 12 上り 12 | 下り12(快速1) 上り12(快速1) |
乗車人数 | 2000 | 2010 | 2018 |
津山 | 2,398 | 2,122 | 1,923 |
院庄 | 66 | 63 | 54 |
美作千代 | 114 | 61 | 34 |
坪井 | 68 | 33 | 21 |
美作追分 | 52 | 21 | 24 |
美作落合 | 238 | 228 | 208 |
古見 | 44 | 44 | 69 |
久世 | 319 | 191 | 186 |
中国勝山 | 514 | 377 | 327 |
輸送人数が多いため、キハ40系・キハ47系・キハ120系が使われ2両編成の列車もあります。
この区間は、旧久世町・旧落合町・旧勝山町の中心駅である久世駅・美作落合駅・中国勝山駅があり。岡山県内の姫新線では最大の利用者数となっている区間です。また、県の行政区画が津山を中心とする美作地域となるため、津山方面への移動がメインとなっています。
輸送密度が500を下回るようになれば、キハ40系・47系の撤退。減車が行われる可能性があります。今のところ存廃論議にはならないでしょう。
姫新線(中国勝山ー新見)
輸送密度 | 1987 | 2018 | 2023 |
中国勝山ー新見 | なし | 310 | 111 |
列車本数 | 1988 | 2000 | 2024 |
中国勝山ー新見 | 下り 8 上り 8 | 下り 8 上り 8 | 下り8(快速1) 上り8(快速1) |
乗車人数 | 2000 | 2010 | 2018 |
中国勝山 | 514 | 377 | 327 |
月田 | 109 | 91 | 61 |
富原 | 103 | 56 | 22 |
刑部 | 135 | 73 | 46 |
丹治部 | 30 | 9 | 17 |
岩山 | 27 | 5 | 4 |
新見 | 1,054 | 929 | 726 |
姫新線で、利用者数が最も少ない区間です。キハ120系での運転ですが、2両編成の列車も1往復存在します。2000年代までは、キハ47系2両の設定がありましたが、今はこの区間にキハ40系・47系は入りません。一時期伯備線(新見ー米子間に)設定されたキハ120系単行列車は、この区間で減車を行った際に出来た運用の合間を使っていたものと思われます。
実際、いつ廃線の話が出てもおかしくない状況ですが、芸備線がある程度方向性が決まるまでは車両運用の関係で安泰だと思います。2025年のダイヤ改正での最終列車繰り上げは、恐らく1往復減便のための布石でしょう。
因美線(東津山ー智頭)
輸送密度 | 1987 | 2018 | 2023 |
東津山ー智頭 | なし | 162 | 134 |
列車本数 | 1988 | 2000 | 2024 |
東津山ー智頭 | 下り13(急行4) 上り13(急行4) | 下り 11(美作加茂発4) 上り 11(美作加茂行4 | 下り9(快速2・美作加茂発2) 上り9(快速2・美作加茂行2) |
乗車人数 | 2000 | 2010 | 2018 |
東津山 | 115 | 113 | 118 |
高野 | 18 | 17 | 26 |
美作滝尾 | 78 | 61 | 30 |
三浦 | 69 | 30 | 14 |
美作加茂 | 195 | 98 | 64 |
知和 | 27 | 5 | 4 |
美作河井 | 30 | 21 | 12 |
那岐(鳥取県) | データなし | データなし | データなし |
土師(鳥取県) | データなし | データなし | データなし |
智頭(鳥取県) | データなし | データなし | 2,911 |
智頭急行が開通した1994年(平成16年)12月3日からは、陰陽連絡線から地域輸送に役割が変わり、普通列車は、智頭駅で分断されました。列車本数も減り、快速列車が設定され利用の少ない駅は通過となっています。なお、那岐駅ー智頭間は鳥取県に属するため上りのみ1本区間列車が設定されています。ここも、廃線の可能性のある区間です。
列車は、キハ120系で運行され2両編成の列車もあります。那岐発鳥取行きの列車は、キハ47系4両での運転となります。
まとめ
岡山県の赤字ローカル線(芸備線・姫新線・因美線)は、姫新線の津山ー中国勝山間を除き廃線となる可能性が高くなっています。芸備線の方向性が決まり次第話が出てくるでしょう。今後の行方が心配な路線です。
芸備線再構築協議会の記事です。よければ見てください。
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